Topic 1. 超高圧超高温物質科学の魅力

1万気圧を越える
超高圧の世界
超高圧超高温下での
物質創製
どうやって超高圧力を
発生させるのか?
無限に広がる
未知の世界



Topic 2. 研究内容

主な研究
テーマ
主な研究開発高圧力合成プロセスと
研究対象物質・材料






 

超高圧超高温物質科学の魅力

1万気圧を越える超高圧の世界




 我々が生活している世界は1気圧であり,1万気圧(約1GPa:ギガパスカル)を越える圧力とは想像だにできないかもしれません. 碧く広い海の底は最も深いところでも約0.1GPaです. 1GPaを越える圧力がいかに高いかが少しはイメージできるでしょうか. しかしながら,宇宙空間では100GPaを越える超々高圧の世界でさえけっして特別ではなく,人類の星である地球の中心部は約360GPaです. そんな超高圧の世界で物質を合成したら何ができるのだろう.そんな素朴な疑問が,未知の世界への扉を開けてくれます.







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超高圧超高温下での物質創製




 温度と圧力は物質の相安定性を司る重要な熱力学変数であり,これらを共に“超高”とすることにより,物質の相安定性を大きく変化させることができます. 我々は独自の超高圧高温発生装置を用いて,常圧では得られない新しい物質を創製することを試みています. 物質の三態は固体,液体,気体ですが,超高圧超高温下では物質は複雑な状態をとります. 例えば,気体とも液体とも区別のつかない超臨界流体という特異な状態が存在し,我々は新しい化学反応場を手に入れることできます. 従来の超臨界流体の化学反応はMPaオーダーの圧力領域で行われていますが,我々は数十GPa・数千Kという超高圧超高温下における超臨界流体を利用した物質合成を試みています. 反応性の高い超臨界流体を用いることで,短時間で結晶性の良い物質を得ることができます. 現在までに,超高圧超高温の超臨界窒素流体と様々な遷移金属や希土類金属を反応させることで, 窒素に富む全く新しい金属窒化物の合成に成功しました.

Fig.3 超高圧超高温下で育成された角柱チューブ状の酸化ゲルマニウム結晶

 また,合成反応だけでなく,超高圧超高温下での単結晶育成も試みており,サブミクロンサイズのユニークな形態の結晶を得ることに成功しています. 例えば,超高圧超高温の超臨界窒素流体を用いた単結晶育成法では,青色発光ダイオードの半導体材料として用いられる窒化ガリウム(GaN)の単結晶が極短時間に成長することがわかりました. 最近では光触媒として用いられる半導体である酸化チタン(TiO2)を超高圧超高温下で数秒間溶液成長させただけで,サブミクロンサイズの中空角柱状というユニークな形態の結晶が成長することがわかりました.[詳しくは研究成果をご覧ください]








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どうやって超高圧力を発生させるのか?



 我々の研究室では,超高圧高温場を利用して新物質の合成を試みています.特に『ダイアモンドアンビルセル』と『マルチアンビルプレス』という2種類の超高圧発生装置を用いて合成をおこなっています. ダイアモンドは最もよく知られた宝石です.きらきらと光るその様相はいかにも魅惑的であり,未知の何かを期待させてくれます. 宝石として一般に知られているダイアモンドは実は世の中で最も硬い物質です. 硬い一対のダイアモンドの間に物質を挟み荷重をかけると,1GPaを越える超高圧が容易に得られます(Fig.1). この原理に基づいてつくられた超高圧発生装置がダイアモンドアンビルセルです(Fig.4). ダイアモンドアンビルセルは手のひらに乗るほどの小型の実験装置であり,約300 GPaという地球の中心部に匹敵する超々高圧でさえ発生することが可能です. また,ダイアモンドは幅広い波長に対して透明です. すなわち,一対のダイアモンドアンビル間に挟まれている超高圧状態の物質に,外部からダイアモンドを通して赤外レーザーを照射することにより超高温状態にすることが可能です. こうして,ダイアモンドアンビルセル(DAC)と赤外レーザー(LASER)の組み合わせたシステム:LASER-DACによって,超高圧超高温の世界が得られます.

 一方,マルチアンビルプレスは,超硬合金のアンビルで試料を6方向から等方的に加圧します. 高圧下で試料セルに組み込まれたヒーターに電流を流すことでジュール熱により,高圧高温状態を実現します. マルチアンビル装置は,ダイアモンドアンビルに比べ圧力発生領域は低いですが,大容量の試料体積が確保でき,一般的な評価装置を用いて合成物の物性測定をおこなうことが可能です.

Fig.5 マルチアンビルプレス
Fig.6 マルチアンビルプレスの試料加圧前の様子






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無限に広がる未知の世界


Fig.7 超高圧超高温の世界を楽しむ若い仲間と共に

 LASER-DAC超高圧超高温発生システムは1970年頃に初めて構築され,その歴史はまだ40年ほどです. 周辺技術の進歩と共に,LASER-DACシステムも進歩し続けています.また,マルチアンビルの圧力発生領域も技術の進歩と共に拡大を続け,100 GPaの圧力発生を確認したという報告もあります. 従来,超高圧発生技術は主に地球深部関連物質のみに焦点が当てられ研究が進められてきました. しかしながら,物質:マテリアルは多種多様であり,LASER-DACやマルチアンビルプレスなどの超高圧力発生技術によって開けられた扉の向こうには無限に広がる未知のマテリアルサイエンスがあります. 当研究室ではその未知の世界の中で,若い力とともに夢を持って超高圧超高温の世界を日々楽しんでいます.そして,その一日一日が新たな知の創出と未来材料の創製につながると信じています.




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研究内容

超高圧力下で物質を合成する独創的な新技術を開発して,様々な無機化合物の新物質・新結晶の創製を行うとともに相安定性および結晶構造と物性を解明しています.
具体的な内容については 研究成果(クリックすると別ウィンドウが開きます)をご覧ください.

主な研究テーマ


□超高圧力下での新しい無機化合物の創製と単結晶育成
□超高圧高温下での物質の相安定性の解明
□超高圧高温下で創製した新物質の物性解明
□超高圧力下での合成およびその場測定技術の開発

具体的な研究対象


□ 新物質創製
窒化物,酸化物,リン化物,珪化物,ゲルマニウム化物,金属間化合物,炭化物,硼化物などの無機化合物
□ 特異構造
層状化合物,カゴ状化合物,ナノチューブ結晶,準結晶,ガラス構造物質,低次元化合物など
□ 物性
超硬質性,電子物性,弾性,熱膨張,格子物性,超伝導,発光特性,熱電変換特性,光学特性,磁性




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